新型コロナウイルス禍の医療マーケティング(修正版)

新型コロナウイルス感染症と医療マーケティング2020
 2020年は初頭から新型コロナウイルス感染症で医療のみならず経済で世界を揺るがしており、急性期を中心とした医療機関は見直しを迫られています。全国保険医団体連合会によれば4月の診療分は3割の医療機関で保険料収入が30%以上減少したとのことです。
ここではコロナウイルス感染症禍で医療及び病院経営の見直し時のマーケティング2020年に関して内容を更新しました。

はじめに

新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)では 多くの医療機関が業務の縮小や外部からの人の出入りを制限するなどしました。そのためにホームページや宣伝・PRなども縮小したり、面会の禁止などの対応策を講じました。
マーケティング担当者にとって早急に対応策を構築しなければならない状況にあります。 COVID-19は不確実性、政治・経済の不安定さを生み出しており、地域的、全国的、そして世界的にも医療は最優先事項となっています。その中で新型コロナウイルス感染症の第2波またはワクチン製造など分からないことはありますがCOVID-19禍で力強い復活を確実にするために医療マーケティング(またはヘルスケア・マーケティング、メディカル・マーケティング)を着実に推進する時です。次の項目について検討または修正が必要となります。
  1. 長期的な成長戦略
  2. 需要創出
  3. ブランドの評判
  4. ブランド認知度
  5. コミュニケーションと広報
  6. 患者と医療者の教育
また既にCOVID-19から自院の目指す方向に経営をスイッチした医療機関は、その方針や医療サービス、患者や周辺医療機関との関係を再構築することも必要となります。

病院経営課題

病院経営課題に新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックを追加しました。優先順位はいままでの達成度により異なりますが、新しい課題ほど下に記述されております。
  1. 理念の明確化と浸透
  2. 医療マーケティング見直しと強化(分析、評価、コミュニケーション、PR・広報・エンゲージメント)
  3. 地域の医療・介護連携と紹介率・逆紹介率向上
  4. 生産性向上と働き方改革
  5. 管理強化とKPI設定
  6. 資金調達と施設・設備の刷新
  7. 診療報酬分析
  8. 患者数の変化(受療動向の変化)
  9. 診療単価
  10. 平均在院日数と病床稼働率
  11. 入院外来患者比率適正化
  12. 診療材料費削減
  13. 外部委託費管理
  14. 請求漏れ、未収金対策
  15. 医療サービス標準化
  16. 医療安全強化
  17. 感染症対策(パンディミックにおける職員の安全対策を追加)、
  18. チーム医療の充実と職員のコミュニケーション改善
  19. QIのアウトカム
  20. 接遇
  21. 患者・家族への情報提供方法
  22. ICT(IOT&AI)
  23. 職員教育と定着率、モチベーション(及び院内コミュニケーションの強化)
  24. ガバナンス強化(業務管理、人事管理等)
  25. BCP(事業継続計画)およびリスク管理(及び緊急事態宣言)
当然のことながら新型コロナウィルス禍では病院職員の安全(16)や生産性を確保することは優先的に配慮することが望まれます。

医療機関の医療マーケティング

 夏を過ぎて既に多数の病院運営を新型コロナウィルス対応に切り替えて、または感染症対策を強化して、継続した環境を想定して医療機能を再構築しています。
この中で経営計画を策定時のマーケティング視点でまとめ、新型コロナウイルス感染症のパンディミックにおいては下記の5項目について検討することがポイントです。
  1. 診療報酬の低下と医療行政
  2. 外部要因(受診控え、高齢化、高度情報化社会、パンディミック)
  3. 内部要因(職員の安全対策、組織、ポジショニング、人材の退職・解雇、キャッシュフロー)
  4. 医療サービス(病棟編成と収益の変化の調査、高度救急医療、感染症病棟、地域包括ケア病棟、専門外来、介護医療院等)
  5. リカバリー計画(安全をキーワードとした具体的な復旧、回復プロセスを構築)
 日本病院会などによれば4月の病院収入は10%以上の減少になっています。まだ全体の情報がわからない状態もあり個別のケースに言及できませんが、キャッシュフローが数か月先が見通せないほど深刻な状況も発生しています。
急性期、診療所などによって異なりますが、共通していることは病床利用率の減少、外来診療と手術の減少など主要な業務が甚大な影響を受けています。
さらに自院の病棟編成とポジショニングを明確にし、新型コロナウイルス感染症の影響が低下する時期を想定して組織横断的に対策する必要があります。そのためには企画部門だけでなく診療部門など全組織的に、明確な権限をもって早急に対応する必要があります。
以上の内容から医療マーケティングにおいての優先事項は下記の項目が想定されます。
  1. 経営戦略と自院のポジショニングの確認
  2. 経営戦略変更に伴ったマーケティング戦略の広報宣伝PRの見直し
  3. 安全・安心の枠組みと提供体制の情報提供方法

参考:緊急事態宣言解除後の病院広報・PR

COVID-19パンディミックにおける医療マーケティング(ヘルスケア・マーケティング)の施策(まとめ)

新型コロナウイルス感染症禍でも患者を第一優先にして次の項目について生産性向上を踏まえたうえで検討する必要があります。
  1. ポジショニングと「安心な医療」対策
  2. 診療報酬(診療科、病棟編成、医療サービス)推移
  3. 医療技術
  4. 医療提供方法:電話・オンライン診療・遠隔医療(非接触での医療提供)
  5. デジタル トランスフォーメーション(オンライン健康教室・患者相談室・安全な診療の枠組みと生産性向上)
医療提供全体において、非接触にできるところは推進し、その中で「安心」の提供が受療行動を促します。小児科や眼科、歯科、耳鼻咽喉科は困難なこともありますが、患者の最も関心がある部分についてコミュニケーションしないかぎり患者にはわかりません。
電話診療を厚生労働省は暫定的な利用として進めていますが、時間の経過とともに便利なことが認知され継続して利用される可能性もありますので、各医療機関が自院の戦略を見直していくことが必要となります。同様に予約から支払、処方箋の受け取り等においてデジタル化導入についての検討が必要です。また質の高い医療の必要性には変化が無く、患者がこれまで以上に医療に精通し、状況によって選択的になってきます。
マーケティングと広報担当者は現状をキチンと分析し、経営者に報告することが必要です。ほとんどの病院経営者には診療報酬や財務情報の報告は充実していますが、本来のマーケティング分析は届いていない事実があります。特にCOVID-19禍ではマーケティングの早い分析と評価が対応を早くし生産性を向上させるうえでも必要です。

【資料:マーケティング戦略】重複

 

医療関係者においてマーケティングは宣伝・PRと誤解している方がおります。1970年代マーケティングの基本は4Pと言われた時代には販売に力を入れていた時代がありました。大量生産の結果、商品が売れなくなりましたが、一方でカラーテレビ放送が日本で始まった時代でもありました。この時代はマーケティングと営業はほぼ同じ意味を持っており、マーケティングと言えば宣伝の意味合いがありました。日本企業でもマーケティング部門があるところは少数でした。
しかし最新のマーケティングはフィリップ・コトラーによれば従来の顧客(患者に置き換える)は安全への要求だけではなく自己実現の要求が高まっているとしています。即ちより患者につながるようなマーケティング戦略に進化し、接遇や患者満足度よりもさらに高い欲求、エンゲージメントが重要としています。また医療の非営利性についてもマーケティングはソーシャル・マーケティングという形で新たな解決策を提供することができます。(一部引用:マーケティングの未来と日本、フィリップ・コトラー著)
マーケティング戦略の対象も患者だけではなく、喫煙者、特定の患者(ペイシェントジャーニーの違いによる区別も可能)、医療関係者、学生など分けることによって訴求力が強化されます。また医療提供の形も新たな患者とつながるために開発されることが予想されます。
以上のように医療機関と患者との関係の見直し、即ち「ホームページやパンフレットに記載されているので読んで下さい」だけではなく、どのようにつながっていくことができるのかを患者に明確に伝えていくことが必要な時代になりました。そのためのマーケティング戦略を策定することが重要です。

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