患者エンゲージメントとマーケティング

患者エンゲージメント

医療(ケアとキュア)の最終ゴールとそのためのプロセスとマイルストーンをマーケティングの視点から考えてみました。その中で、日本の医療で患者を大事にしようということは記述されていますが、そのプロセスやマイルストーンについては詳細は掲げられていません。一方、WHOを含めたOECD諸国では患者エンゲージメントの重要性と具体的な施策を展開し始めており、近年の米国の医療関連学会では必ず出てくるキーワードです。

日本のマーケティング関係者の中にも従来顧客(患者)との関係(CRM)にフォーカスしていましたが、顧客(患者)とのエンゲージメント(CEM)に移行したとしている人もいます。このことはマーケティングプロセスが変わりますので、戦略も変わってきます。例えば今までは受診するまでにフォーカスしていましたが、エンゲージメントでは受診後のつながりにも言及しています。

しかし、患者エンゲージメント(Patient Engagement)についてWHOのウェブサイトに記載がありますが、厚生労働省のウェブサイトでも患者エンゲージメントについて言及しておりません(この項目が理解されていないとOECD諸国における医療の比較ができない)。この記事は患者エンゲージメント(ペイシェント・エンゲージメント:Patient Engagement)についてできる限り分かりやすくまとめてみました。

患者エンゲージメント(Patient Engagement)とは(WHO記事から抜粋)

WHOで述べられている内容は下記の通りです。

医療提供者同様に患者、家族、介護者の能力を強化するプロセスに関して、医療サービス提供の安全性、品質、人間中心性を強化し、患者自身のケアについて患者の積極的関与を促進し支援することです。

まず、エンゲージメント(Engagement)の訳では、ご存知のように「婚約」という意味ですが、患者と仲良くなるわけではないので意味が良く分かりません。しかし意訳ですが「結納」にすると少し近い意味合いになるのかと思います。理由は仲良くというよりも「喧嘩はするかもしれないけどつながっている約束」という意味に理解しています。「つながる」というのはここでは触れ合う程度のことを意味しますが、約束というほど強いイメージではありません。

マーケティングでは広告・PR・広報で患者やその家族、医療関係者の認知を得て、関心や興味を持ってもらいながら医療機関と受診前や受診後もつながっていくことが一義的にあります。さらには医療機関について自ら知人またはオンライン上でその価値を共有していくこと、即ち口コミを積極的にします。マーケティング戦略では一連のプロセスを強化する意味があります。

患者エンゲージメントの意義

患者の利点としては、患者は健康を増進することに医療機関と協力し、 医療への高い関与により治療のアウトカムは向上することです。 患者は自分の医療意思決定プロセスに関与することを望んでおり、自分で医療について自分で意思決定してケアをしている人はより健康で、より良いアウトカムを得る傾向にあるとしています。

また、患者が経験した医療のこと、社会的なことなどを可能な限り共有することは「医療システム」を補完し、時間、薬、医療従事者のリソースを削減することが可能です。さらに患者が積極的に治療に参加(アドヒアランス(adherence))することで限られた医療リソースを適正に配分することにもつながります。

患者エンゲージメントが改善することで患者と医療提供者間の相互の説明責任と理解が促進されることが期待できますので、情報に基づいて治療選択に自ら関わり、医療機関は患者の意思決定をサポートする立場になりますので両者の関係に変化がでることが予想されます。

患者エンゲージメントとその方法

マーケティング視点の患者エンゲージメントの方法(または種類、形)は次のようなものがあります。

  1. 医療機関の存在をオンライン上で知ること
  2. 医療機関の存在を知人と共有する
  3. 医療機関の診療内容、医師名など詳細について知る
  4. 医療機関で受診する
  5. 患者が積極的に治療に関わる
  6. 医療機関の評価についてオンライン、オフラインで知人と共有する
  7. その患者がその医療機関に愛着心、思い入れを持つ
  8. その患者が同じ診療について自らの判断で医療の経験を不特定の人に発信する
  9. その患者が同じ症状、疾患の患者の精神的、社会的サポートをする

マーケティングでは項目7がゴールですが、そのためには途中のプロセスである患者が関連する各プロセスにいる医療関係者が最善のペイシェント エクスペリエンス(患者体験)を提供していくことが必要です。すなわち病院のマーケティング担当者はたやすいことではありませんが、横軸のように全組織横断的に患者との接点と反応を整理していくことも必要です。

患者エンゲージメントとマーケティング担当者

マーケティング担当者は、ペイシェント・ジャーニーのプロセスにおいて医療関係者と患者がつながる(接点)複数の点における患者体験(ペイシェント エクスペリエンス:Patient Experience)を高める枠組みを構築しようとしています。

ご存知のように患者満足度だけでは医療は測れないことがいくつかの論文で発表されています。患者満足度では患者の意見は反映されていますが、客観的な医療の質は明示できません。医療提供が持続可能な環境を実現するためには、職員の理解を得ながら患者の満足度を改善する必要があります。労働環境改善、医療機関の技術の向上、さらに従来にも増して患者のヘルスリテラシーの向上とコミュニケーション力や「納得度」を強化する必要があります。

また基本的なことして患者エンゲージメントには個人情報保護、コンプライアンス強化、ガバナンス強化が必要です。そのうえでマーケティング担当者は業務の流れを伝えるだけでなく、患者の病気への取り組みに必要な内容や、基本的なリテラシーを伝えたり、治療への参加を啓蒙していくことを枠組みに入れる必要があります。

通常医療従事者には複数の競合する優先事項があり、患者の安全性と矛盾する場合がありますが、患者のために決定要因としては安全性と幸福感が第一していると考えられますので、マーケティング担当者はどのように患者に伝えるかを担当部門と一緒に試行することも必要になります。

医療サービスを利用している人々はより高い医療技術で、オープンで透明性のあるヘルスケアシステムをますます求めています。それぞれの患者はどのようなサービスが選択するかは異なりますが、医師はその意思決定プロセスにいることは言うまでもなく必要です。

お願い

エンゲージメントを無理やり「結納」としましたが、日本の皆保険制度の歴史と欧米の社会保障や価値判断の基本が民主主義と社会主義のように異なりますので説明不足の感は否めません。より良い表現がありましたらご教示いただければ幸いです。→こちらまでメールをお願い致します
参考:患者エンゲージメントとは

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