メイヨー・クリニック(米国)(Mayo Clinic)はUSニュースにより 米国病院ランキングのU.S. News Best Hospitals 2020-21 で、ほとんどの部門で1位に選ばれました。
世界140か国から130万人以上の患者を診療し1兆円以上の収入を得ているメイヨークリニックの病院広報はどのようにしているのでしょうか?
メイヨークリニックは、ミネソタ州、フロリダ州、アリゾナ州に基幹病院があり、ミネソタ州のロチェスターが本部があります(アリゾナ州とフロリダ州に基幹病院がそれぞれあります)。地理的にはシカゴやニューヨークからは飛行機で1時間以上かかり便利な場所ではありませんが、患者は全米および世界から最先端の治療を求めて年間1,317,900名が来院しています。
病院では医師と科学者が4,200名、レジデントが2400名と豊富な人材をもとに医療、研究、教育をしています。日本の医師の名前も散見されます。
経営の強さの秘密は、先進的な技術の導入、徹底した効率化、医師、スタッフの育成の他に、「患者中心の医療」を基本的な価値としています。この基本的な価値を実現するために患者、スタッフ、そして医療関係者とのコミュニケーションに注力しています。コミュニケーションのために情報システムを最大限に活用して、早くからそのノウハウを蓄積してきました。
2010年にそのコミュニケーション・ノウハウにソーシャル・メディアを使って、体系化しオウンドメディアとして結実しました。その結果として多くの経験や知識を共有するウェブサイトまで作って、医療関係者ばかりではなく患者まで包括したコミュニケーション改善に取り組んでいます。それがメイヨークリニック・ソーシャル・メディア・ネットワークです
●ソーシャル・メディアと病院広報
日本ではソーシャル・メディアのベネフィットよりもリスクばかりにフォーカスされて医療関係では極めて利用が少ないことはご存知の通りです。しかし若い人たちと日本の企業ではソーシャル・メディアの利用は恒常化しています、理由はコストが安いことと、生の情報を発信できるからです。ソーシャル・メディアは年齢層も幅広く広がっています。
ソーシャル・メディアはテキストだけでなく、近年は動画や写真が多く使われるようになりインパクトは数年前より格段に強くなっています。
●メイヨークリニック広報の強さ
コミュニケーションを強化するためにメイヨークリニックは長年にわたって努力をしており、その結果マーケティング及び広報について最先端の技術とネットワークを構築しました。
そのメイヨークリニック・ソーシャル・メディア・ネットワークは広報総責任者のLee Aase氏によって運営され、発信力は、ホームページや印刷物のみの時代からと想像できないくらいに拡大されました。現在では医療界のゴールドスタンダードといわれるほどに評価されています。事実、フォーブスなどの新聞やNBCなどテレビに常に注目されています。
メイヨークリニックのyoutubeは57万人以上のフォロワー、Facebookは45万人以上にフォローされています。この数値はの成功はIT Sloan Management Reviewによれば下記の項目を指摘しています。
- ソーシャルメディアを利用して病院の使命、目的をどのように達成するかを明確化
- ソーシャルメディアのためのメイヨークリニック・センターを設立し職員を指導
- すぐれた医療情報発信(コンテンツ)
このようにメイヨークリニックの強さの秘密は医療技術が高いこと、教育を徹底していることは当然として、マーケティング・病院広報にソーシャル・メディアを導入したことが、強さを確実なものにしていることです。
現在はソーシャル・メディアの活用をさらに進め、他の病院関係者や患者をも巻き込んでツールとして使っています。その根底には患者中心の医療があり、結果として経営の生産性向上や患者満足度向上、医療関係者との関係改善を成し遂げています。
当然のことながら、メイヨークリニック内ではリスクについては担当者、患者、および医療に強い弁護士が検討と知見を重ねています。リスクについては医療提供、経営、コミュニケーション、マーケティング、インターネットテクノロジー、人事管理、患者満足度などあらゆる点から調査、検討し、関係者で共有しています。このことが大きな改善への枠組みを強化しているものと考えます。
経営者がリスクをよく知って、地道な努力をする一方で革新的な手法を絶え間なく導入できる組織は、病院経営の課題(医療技術、人事戦略、マーケティング、ブランディング、広報戦略、医療連携、患者満足度等)を解決していく手法としてとても参考になります。