令和2年度の診療報酬改定は医療費削減に明確なメッセージと地域包括ケアシステムへ転換がさらに推進されます。
新型コロナウイルス感染症と医療マーケティングの修正版(2020.6.4)
医療政策としての地域包括ケアシステムと病院の経営課題は何があるのでしょうか。優先順位はいままでの達成度により異なりますが、新しい課題ほど下に記述されております。
- 理念の明確化と浸透
- マーケティング強化(宣伝・PR・広報・患者満足度・エンゲージメント)
- 地域の医療・介護連携と紹介率・逆紹介率向上
- 生産性向上と働き方改革(デジタルトランスフォーメーションDXと職員満足度向上)
- 経営管理と枠組みとKPI設定
- 資金調達と施設・設備の刷新
- 診療報酬改定対策
- 患者数増加
- 診療単価
- 平均在院日数と病床稼働率
- 入院外来患者比率適正化
- 診療材料費削減
- 外部委託費管理
- 請求漏れ、未収金対策
- 医療サービス標準化
- 医療安全強化
- チーム医療の充実と職員のコミュニケーション改善
- QIのアウトカム
- 接遇
- 患者・家族への情報提供方法
- ICT(IOT&AI)
- 職員の定着率とモチベーション
- ガバナンス強化
- BCP(事業継続計画)およびリスク管理(感染症対策を含む)
医療マーケティングの視点
この中で経営計画を策定時のマーケティング視点でまとめると、下記の4項目に分類できます。
- 医療行政に関わること
- 外部要因(高齢化、高度情報化社会など)
- 内部要因(組織、強み、人材)
- 医療サービス(高度救急医療、地域包括ケア病棟、専門外来、介護医療院等)
上記を踏まえて、マーケティング戦略を策定していくことが必要です。また既に社会保障審議会では対応が議論されていますが、税収が伸びず、高齢者が増加、出生数が低下の現状では日本の社会保障費の不足が言われるようになり、従来の枠組みの維持ができなっていることを勘案する必要があります。
しかし、一部の病院では今までの経営指標の調整(見直し)で経営戦略、マーケティングとしている経営計画が見られます。その内容は診療報酬改定による加算などを加味したもので将来の形を捉えてはおらず、本来のマーケティングとは異なります。設備投資なども課題として取り上げることもありますが、喫緊の課題を共有し対策することが重要です。
2025年問題など時代の変化に留意しながら、対策には過去ばかりではなく将来の予測も盛り込んでいることが重要です。特に自院のポジショニングが明確ではない、または周辺の医療機関と酷似している場合は存続自体も問われることがあります。
患者とつながるための施策(まとめ)
最後に医療関係者においてマーケティングは宣伝・PRと誤解している方がおります。1970年代マーケティングの基本は4Pと言われた時代には販売に力を入れていた時代がありました。大量生産の結果、商品が売れなくなりましたが、一方でカラーテレビ放送が日本で始まった時代でもありました。この時代はマーケティングと営業はほぼ同じ意味を持っており、マーケティングと言えば宣伝の意味合いがありました。日本企業でもマーケティング部門があるところは少数でした。
しかし最新のマーケティングはフィリップ・コトラーによれば従来の顧客(患者に置き換える)は安全への要求だけではなく自己実現の要求が高まっているとしています。即ちより患者につながるようなマーケティング戦略に進化し、接遇や患者満足度よりもさらに高い欲求、エンゲージメントが重要としています。また医療の非営利性についてもマーケティングはソーシャル・マーケティングという形で新たな解決策を提供することができます。(一部引用:マーケティングの未来と日本、フィリップ・コトラー著)
マーケティング戦略の対象も患者だけではなく、喫煙者、特定の患者(ペイシェントジャーニーの違いによる区別も可能)、医療関係者、学生など分けることによって訴求力が強化されます。また医療提供の形も新たな患者とつながるために開発されることが予想されます。
以上のように医療機関と患者との関係の見直し、即ち「ホームページやパンフレットに記載されているので読んで下さい」だけではなく、どのようにつながっていくことができるのかを患者に明確に伝えていくことが必要な時代になりました。そのためのマーケティング戦略を策定することが重要です。