医療ソーシャルメディア

医療ソーシャルメディア

はじめに

日本ではまだソーシャル・メディア(SNSを含む)は過去の間違った個人の利用方法のイメージがあり、邪魔物扱いになっている感があります。それでも厚生労働省や国立がんセンターなどの利用が始まっています。

さらに米国では「患者のために」、そして「医療関係者」のために生産性向上や、患者満足向上、治療への参加を促すことにソーシャル・メディアの利用を促進しています。ここでは次の項目について扱っています。

  1. 医療ソーシャル・メディアとは
  2. ソーシャル・メディアの医療へのインパクト
  3. 国内外の事例
  4. ソーシャル・メディア導入時に準備するべきこと

医療ソーシャル・メディアとは

医療ソーシャル・メディアは医療・福祉領域でソーシャル・メディア(SNSを含む)を活用し、マーケティングのみならず患者のアドヒアランスや職員のチーム力強化を持って医療提供の生産性を向上するためのツールです。
「ソーシャルメディアはインターネットを利用して誰でも手軽に情報を発信し、相互のやりとりができる双方向のメディアであり、代表的なものとして、ブログ、FacebookやTwitter等のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、YouTubeなどの動画共有サイト、LINE等のメッセージングアプリがある」と総務省サイトには記述されています。
医療・福祉において一般的なソーシャル・メディアと区別しているのは、内容が極めてセンシティブであり、個人情報保護や利益相反の観点から留意しなければならない部分が多いためです。
またホームページ(ウェブサイト)と根本的に異なることは、コンテンツの形態やそのコンテンツを共有、拡散するウェブの仕組みがあることです。ホームページとの連携はデジタルマーケティングとして別途扱います。

ソーシャル・メディアの医療へのインパクト

ソーシャル・メディアの有効性は患者や医療関係者、医療・健康に関心がある人々にとって多く報告されています。さらにWHOでも医療サービスの継続的な提供には患者の理解が必須であり、リテラシーが無く受診しなかったり、医療リソースを無駄に消費すことを避けるためにはより消費者の理解と医療への参加が必要としています。このような消費者の行動変容を促すには情報提供だけでなくコミュニケーションが必要とされており、ソーシャル・メディアは距離や時間を超えて支援できる可能性があります。

今日ソーシャル・メディアが影響を与えていない分野はありません。 日本でもソーシャルメディア(スマートフォンに搭載されている)を使って意見を共有し、情報を探し、自分の経験について共有しています。医療も例外ではなく、米国の医師の60%はソーシャルメディアが患者に優れた情報を提供する方法としています。

もちろん、懸念がないということを意味するものではありません。 たとえば、人々がFacebookの利用を選択すると、結果がマイナスになる可能性があります。それでも、医療へのソーシャルメディアのインパクト(強い影響)があり、患者と医療関係者の双方に予想される障碍とともに大きな利益をもたらすことがあります。

患者は医療への疑問があれば医療機関を訪問する前にソーシャルメディア(ホームページを含む)で検索します。

患者にとって、ソーシャルメディアは同じ健康関連の懸念を経験している可能性のある同僚や知人からアドバイスを得たり、自分の不安を聞いてもらう場所になっています。 また、生活習慣の変化や医療問題への解決策についてアドバイスを求めたりします。

例えば、いびきを心配している新世紀世代はブログを探したり、ソーシャルメディアコミュニティのメンバーからアドバイスを求めたりします。 あるいは睡眠時無呼吸のようないびきの健康に対する懸念を緩和したり、いびきのための様々な治療法の有効性についてのブログ記事を探すことも可能です。

ソーシャルメディアはオンデマンドの情報源となることがありますが、情報は最新で正確かどうかなど懸念もあり、 患者は医療価値が無い情報から良い情報を見分ける能力が無く、記事の責任の所在を判別できないことさえあります。

ソーシャルメディアは公衆衛生分野の研究ツールとしても利用できます。例えば、研究者はインフルエンザの発生を追跡し予測するためにソーシャルメディアを使用してきました。さまざまな病気やその他の公衆衛生上の懸念事項について公に利用できる情報が非常に多く、ソーシャルメディアをデータマイニングのソースとして使用する大きな可能性があります。米国の医学会ではソーシャル・メディアで学会の情報を発信するのは普通になっています。従って最新医学情報などは日本のホームページを検索しても見つからないことがありますが、ソーシャル・メディアでは #(ハッシュタグ)をクリックするだけで学会で今まさに発表されている情報を知ることも可能です。この時学会に参加していなくても、学会の雰囲気や医療情報の方向性などはわかるなど研究者や医療従事者には便利なツールです。

またソーシャルメディアは医療機関のためのマーケティングとコミュニケーションツールになりつつあります。1%の人々はソーシャルメディアから得た情報が医療の決定に影響を与えられると指摘した記事もあります。

ソーシャル・メディアはプライバシーに関する懸念や不正確な情報の拡散がある中で、医療業界のあらゆる分野の人々がさまざまな方法で使用することができ、マーケティング、教育、およびさまざまなコミュニティに必要なサービスを提供することができます。

国内外の事例

総務省の平成30年調査によればソーシャル・メディアを60%が使っていますが、積極的に利用しているのは10%未満とのことです。
●米国
米国病院においてもソーシャルメディアの先駆けとなることは社会的にも大きな意味を持つようです。病院のソーシャルメディアチームにとっても日本同様に高度な広告規制等がありますので、課題に直面しながら業務を進めています。
米国のソーシャルメディアの専門家の Jay Bayerさんの19 Outstanding Hospital Social Media Teams 記事を参考にしました。
担当者は良く外部環境を観察しながら戦略的に対応しようとしています。オリジナルのページを見るとマーケティング担当部署の名前も「戦略、デジタル・コミュニケーション、戦略的コンテンツマネージャー等日本では見慣れない部門が多くみられます。
下記に米国医療における最も成功し、魅力的なソーシャルメディアコンテンツの発信する全米トップの病院の19ソーシャルメディアチームを掲載しました(原文ページで詳細なレポートがダウンロードできます)
  1. NewYork-Presbyterian Hospital
  2. Cleveland Clinic(患者体験の向上を推進しています
  3. Mayo Clinic(医療ソーシャルメディアのコミュニティー)
  4. UPMC (the University of Pittsburgh Medical Center)
  5. IU Health (Indiana University Health)
  6. UCLA Health
  7. Johns Hopkins Medicine(名門医科大学)
  8. UCSF Medical Center
  9. Massachusetts General Hospital
  10. Mount Sinai Health System
  11. Cedars-Sinai
  12. Vanderbilt University Medical Center
  13. Memorial Hermann
  14. Florida Hospital
  15. Mercy Hospital (米国最大の医療グループに属す)
  16. Michigan Medicine
  17. Christiana Care
  18. Northwell Health
  19. BayCare

このようにソーシャルメディアは単にデジタル・コミュニケーションのツールでなく、患者と医療提供側の関係の見直し、生産性や、医療情報および技術の共有による教育、健康の啓発、患者のサポート、患者満足度向上など「患者中心の医療」推進のためのツールとして大きく関与してきています。

米国は日本の皆保険制度とは異なる医療行政ですが、患者とつながる医療にフォーカスした医療提供を目指し、患者の満足度向上とともに医療費の削減と医療従事者の働く環境改善の課題を同時に考えていく必要があることは日本と同じです。このように日本でも課題解決のきっかけをつくる可能性がソーシャルメディアにはあります。

ソーシャル・メディア導入時に準備すべきこと

  1. 情報の質と信頼性を担保できる組織
  2. 良い患者体験(ペイシェント エクスペリエンス)ができる戦略的な情報選択
  3. ペイシェント・ジャーニーを理解し行動変容を促すソーシャルメディアの理解
  4. ソーシャルメディアが患者の受療行動を妨げることに対する対策
  5. 守秘義務とプライバシーのガイドライン
  6. 個人情報を公開に対するリテラシーと教育
  7. 医療者と患者間のコミュニケーション・ガイドライン

ソーシャル・メディアを有効に利用するために医療リテラシーのみならず政治、宗教、年齢、家族構成、個人の経済状況、生活習慣、社会的状況などを考慮し一人ひとりの患者との対話またはコミュニケーションに留意することが必要です。

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