メイヨー・クリニック(米国)(Mayo Clinic)はUSニュースにより 米国病院ランキングのU.S. News Best Hospitals 2022-23で、ほとんどの部門で1位に選ばれました。世界140か国から130万人以上の患者を診療し1兆円以上の収入を得ているメイヨークリニックのマーケティングについて2013年~2018年まで毎年メイヨークリニックのソーシャルメディアカンファレンスに参加し、マーケティングの強さを実感しましたので概要をご案内します。
シカゴから飛行機で1時間、ロサンゼルスから飛行機で3時間と都市から離れた町、ロチェスター(13万人)で世界140か国から130万人以上の患者を診療し1兆円以上の収入を得ているメイヨークリニックのマーケティングは医療技術から医学教育も含めて、堅実な枠組みで運営しています。
メイヨークリニック(米国ミネソタ州)の概要
メイヨークリニックはミネソタ州、フロリダ州、アリゾナ州に基幹病院があり、ミネソタ州ロチェスターが本部です。地理的にはシカゴやニューヨークからは飛行機で1時間以上かかり都市とはかけ離れた場所ですが、患者は全米および世界から最先端の治療を求めて年間1,317,900名が来院しています。
病院経営の強さの秘密は、優れたマーケティングと先進的な技術の導入、徹底した効率化、医師、スタッフの育成の他に、「患者中心の医療」を基本的な価値としています。この基本的な価値を実現するために患者、スタッフ、そして医療関係者とのコミュニケーションに注力しています。コミュニケーションのために情報システムを最大限に活用して、早くからそのノウハウを蓄積してきました。
2010年からコミュニケーションや情報配信にソーシャル・メディアを使って、体系化しウェブサイトとともにオウンドメディアとして結実しました。その結果として多くの経験や知識を共有するウェブサイトまで作って、医療関係者ばかりではなく患者まで包括したコミュニケーション改善に取り組んでいます。
ソーシャル・メディアとマーケティング
メイヨークリニックのマーケティングスタッフを見るとほとんどがソーシャルメディアやウェブマーケティングの専門家で構成されており、小さな放送局以上の組織になっています。
聞きなれない方もおられるかもしれませんが、日本ではソーシャル・メディアのリスクばかりにフォーカスされて医療関係では極めて利用が少ないことはご存知の通りです。しかし若い人たちと日本の企業ではソーシャル・メディアの利用は恒常化しています、理由は患者や職員とのコミュニケーションをおいており、距離、時間、組織を超えて情報を共有でき、素早くつながることできるからです。
ソーシャル・メディアはテキストだけでなく、近年は動画や写真が多く使われるようになり患者にもたらすインパクトは格段に強くなっています。またメイヨークリニックのソーシャル・メディアはデジタル・マーケティングを目指しており、いわゆるデジタル・トランス・フォーメーション(変革、変容)を成し遂げています。その結果として多くのメディア(放送、新聞)から注目されています。
メイヨークリニックのマーケティングの強さ
メイヨークリニック・ソーシャル・メディア・ネットワークは広報総責任者のLee Aase氏によって運営され、発信力は、ホームページや印刷物のみの時代からと想像できないくらいに拡大されました。現在では医療界のゴールドスタンダードといわれるほどに評価されています。事実、フォーブスなどの新聞やNBCなどテレビに常に注目されています。
マーケティングとコミュニケーションを強化するためにメイヨークリニックは長年にわたって努力をしており、2009年からソーシャルメディアを導入しソーシャルネットワークの構築と職員の育成に力を入れてきました。その結果としてyoutubeは57万人以上のフォロワー、Facebookは45万人以上にフォローされています。
IT Sloan Management Reviewによればメイヨークリニックの強さとして次の指摘しています。
- ソーシャルメディアを利用して病院の使命、目的をどのように達成するかを明確化
- ソーシャルメディアのためのメイヨークリニック・センターを設立し職員を指導
- すぐれた医療情報発信(コンテンツ)
このようにメイヨークリニックの強さの秘密は医療技術が高いこと、教育の強化を基本としてマーケティング・広報・コミュニケーションにソーシャル・メディアを導入して、広く患者や医療関係者に支持されたために強さを確実なものにしています。
現在はソーシャル・メディアの活用をさらに進め、他の病院関係者や患者をも巻き込んでツールとして使っています。その根底には患者中心の医療があり、結果として経営の生産性向上や患者満足度向上、医療関係者との関係改善を成し遂げています。
当然のことながら、メイヨークリニック内ではリスクについては担当者、患者、および医療に強い弁護士が検討を重ね、知見を蓄積しております。リスク簡易の範囲は医療提供、経営、コミュニケーション、マーケティング、インターネットテクノロジー、人事管理、患者満足度などあらゆる点から調査、検討し、関係者で共有しています。このことが大きな改善への枠組みを強化しているものと考えます。
経営者が危機管理をしながら地道な努力をする一方で革新的な手法を絶え間なく導入できる組織は、病院経営の課題(医療技術、人事戦略、マーケティング、ブランディング、広報戦略、医療連携、患者満足度等)を解決していく手法としてとても参考になります。
*追記 「わかりやすいメディカルマーケティング」出版
2022年に真野俊樹先生のお誘いで「わかりやすいメディカルマーケティング」にメイヨークリニックのマーケティングについて記事を書かせていただきました。より内容を細かく説明しておりますので、よろしければそちらも参考にして下さい。⇒こちら
更新日:2023/04/28