ユーザー数約7倍 コンバージョン約140%増加(前年同期比)
病院経営企画・広報およびホームページ担当者にとってアクセス数は重要な指標です。ここ6か月ほどX病院のアクセス数が大幅に増加し前年同月比7倍以上(2018年12月現在)になりました(2020.6現在増加中)。その結果として問い合わせやコンバージョン率も増加しました。病院ホームページにとってアクセス・ユーザー数はあくまでも広報にとっての一つの指標であり、全てではないということを前提に、ユーザー数(閲覧者数)を数か月間検証した結果を共有します。
参照:病院広報・PR 戦略2019年|医療マーケティングとコミュニケーション
アクセス数がこれほど大きく変化したのはGoogleのアルゴリズムの変更があったからで、より正確な情報提供を目指す方針が徹底してきたものと理解しております。またこのような大きな変化は弊社でも初めてです。この結果から推定されること、確信を得られたことがあります。さらにこの結果からGoogleの現在の傾向について方向性が得られました。さらにいくつかの「キーワード」について数倍にアクセスが増加し、どのようなキーワードが当該病院においては重要かも推定されました。また2019年4月、6月にもメジャーアップデートがあったようですが、継続してアクセス数は増加しており、Google検索について知見を得ることができました。
参考:Possible Google Search Ranking Algorithm Update July 11 & 12th?
以下に検索アルゴリズムが当該ホームページに有利に働いたと考えられる要因について列挙します。
【Google検索アルゴリズムについて】
アクセス数増加や検索順位の向上はGoogleのアルゴリズムの変化によるものです。しかしどの項目がアルゴリズムに強く影響したかは明示できませんが、以前から注力していた点で影響があったと考えられる項目について記述します。今回のアクセスの増加は従来からの取り組みの方向とアルゴリズムまたはGoogleの運用方向とが合致したものと考えております。従って検索対策に血道をあげていたわけではありません。当然のことながら検索広告やその他のウェブ広告も掲出しておりませんでした。
取り組みを強化した点は技術的なことは当然ながら、医療マーケティング観点からのアプローチです。
参照:検索に対する Google の方針
注目すべき点はGoogleの方針と取り組みによると原則ユーザー(患者)のためになる検索サービスであることです。患者のためになるとは単に情報の提供だけでなく患者の関心、興味があるものであり、最終的にはエンゲージメントを高める内容であることという意味です。検索技術(いわゆるSEO)は何か裏技のように説明しているような情報もありますが、実際にはそのようなことは無く、Googleが関連情報(英語)を出しているので確認ができるはずです。
但し、Googleアルゴリズムの要素は約200項目あり、その効果については様々ですので、自院のホームページで試行錯誤することも必要となります。従って検索で優位に立つためにはGoogleの取り組みを理解した上で、自院のマーケティングのポジショニングをきちんとすることが基本と考えております。
要因1 検索対策と自院の特長把握(差別化)
このサイトでは検索対策とアクセス解析は継続して確認しながら、できることは概ね実施し、その結果について検証をして確認しております。従ってあまり効果が出なかったこともいくつかありましたが、優先順位をつけて試行錯誤して作業は進めました。
参考:検索エンジン最適化スターターガイド
近年はSEOに関する情報は一般化しており、裏ワザ的な技術を喧伝する業者もおり戸惑うこともありますが、基本的な検索対策のみでは差別化はかなり難しいと考えています。特に継続して1年以上増加することは難しくなっています。その理由はGoogleの次の記事 How Google Search Works「Google検索はどのように動いているのか」 にありますように Googleはホームページだけでなくマイビジネス、マップなどあらゆるオンライン上のデータベースを参考にしています。従ってホームページは重要ですがそれだけで検索上で優位に立てるとは断言できません。
Googleは情報に関して提唱しているのは情報の専門性、権威性、信頼度を表すE_A_Tです。これが同じ内容の情報でも権威性等により評価されて検索順位も変わってしまいます。具体的な評価項目はわかりませんが、この部分は試行錯誤が必要です。
さら検索キーワードの選定には医療機関の特長に留意しました。また途中で見直しもたびたび実施しました。そのキーワードと自院の特長、または医療に結びつけることにも留意しました。
またソーシャル・メディアなどとの連携も強化していますが、医療機関においてはソーシャル・メディアへの理解は個人利用とは極めて条件が異なることを理解しにくく、いまだに浸透したとは言えない状況です。自院の特長をきめ細かく発信するためには有効な手段と考えており、今後はエンゲージメント改善が必要と考えております。
要因2 戦略的情報配信
どのような情報を発信するかは、検索対策のみならずコンバージョンを高めるために極めて重要です(この詳細については別途記載します)。
情報の種類は医療機関の場合は「お知らせ」が多い傾向にあります。このことは悪いことではないのですが、Google検索対策としてもこれでは不十分です。患者の認知を得るために適切なキーワードを選定し、関連の情報提供が重要です。
さらにエンゲージメントや患者の行動変容に結びつけるには、患者が納得できる情報で泣ければ患者の行動は中折れしてしまいます。アクセス解析をしながら患者行動(ペイシェント・ジャーニー)の仮説を立てて、患者の関心・疑問や患者が受療行動のような行動変容に結びつく情報が最終的なゴールです。
参照:ペイシェント・ジャーニーと病院経営
ペイシェントジャーニーを基にした情報の種類は多くありますが、現実にそれらの情報を院内でまとめてもらうことは時間を要したり、協力者を見つけられなかったりの苦労はあります。病院広報・PRは広報部門だけではできないので院内の協力は欠かせんません。記事の制作依頼は作成者を見つけることが困難な仕事の一つです。
情報の選択にあたって、患者の受療行動またはペイシェント・ジャーニーを考えると、患者それぞれ異なりますので、どのようにタッチポイントを考えるかで配信する情報の種類は変化してしまいますので、アクセス解析を参考に記事内容を決めました。
このようにホームページ制作技術と共に「コンテンツ・マーケティング」と言われるようにコンテンツ(情報・記事)の充実に注力しました。Googleの方針でもあるように、患者が知りたがっている情報を提供することこそが、病院広報・PR担当にとって重要であり、さらに広報・PRとしての「患者中心の医療」に沿った業務となります。
配信の時期や内容は医療機関の経営企画の方向に合わせて変更をします。従って初めから配信計画をキッチリと固定する必要は無いと考えていますが、方向を見失うことなく情報配信のタイミング確認しながら配信しました。
要因3 院内情報の集約と統合
ほとんどの病院広報・PR担当者にとって院内情報の集約、およびコンテンツ制作は課題の一つと思われます。しかしこの部分に切り込むには経営者の理解や、組織のチーム力が課題になることがあります。
そのために診療部門や検査部門などバックオフィス担当者との関係に留意することも多く、かなり時間がかかることもありました。関係構築は広報担当者が始めますので、個人的なつながりが大きく、担当者の性格によっても業務の進行には時間がかかることがあります。もちろん広報委員会等が効果的に機能すれば、かなりの部分は解決できることもありますので、組織が機能しているときには利用をお奨めします。
また積極的な診療科を突破口にして、徐々に拡大していくことも可能です。部門とのあらゆる接点で、関係構築と関係維持に注力していくことには多くの期待があります。
まとめ
上記は現在のX病院がGoogleの検索方針に合致しているから検索上優位になっているのですが、今後もアルゴリズムの更新がありますのでこのままが良いということは考えておりません。主な項目は変わらないかもしれませんが時代や技術に合わせてアルゴリズムが変化しますので、広報業務も進化する必要を認識しております。今後の広報・PRのポイントは次のように考えています。(その後2020年6月になってもユーザー数の増加傾向は止まりません。2019年ではユーザー数は前年比2倍に増加)
ペイシェント・ジャーニーを基にコンテンツの独自性(オリジナリティ)を追求し差別化
経営企画・広報の側面からペイシェント・エクスペリエスを高める
ソーシャルメディアでのノウハウを蓄積し、患者とのつながりを強化
ターゲットとなる患者の最大の関心事について情報発信と分析
検索やHTMLなど最新のインターネット技術を採用
Googleの取り組みを理解することはパラダイム・シフトにつながっているものと理解しています。すなわち対象である患者を考えるということは、患者中心の医療に似ています。建前だけでは本当の意味のエンゲージメントは得られません、従って医療提供側、および広報部門は行動変容が迫られることになります。一方的に配信する情報だけでなく技術的、経済的、社会的、行動心理的な側面への言及が必要です(→パラダイム・シフト)
グラフの作成は2018年末です、現在(2019年5月)はさらにユーザー数は25%以上増加しましたことを申し添えます。また入院案内のダウンロード数も2年間で3.5倍(地域医療連携室での直接のやり取りは含まれません)。弊社では一過性の対策ではなく継続的に、技術、マーケティングの観点から広報・PRを支援しております。