はじめて病院広報を担当したら

はじめて病院広報を担当したら

通常、病院広報担当者の人数は少なく、場合によっては他の業務との兼任であることもよくみられます。前任者の退職・人事異動で突然に病院広報を担当した時の担当者向けにまとめてみました。

病院広報業務には経営企画以外に総務、人事、医事、特に診療部門を熟知していることに加えてマーケティングやインターネットやソーシャルメディアの知識が必要です。しかし、医療機関によっては広報業務全体を把握するや、短時間に業務を習熟することが困難なことがあります。その理由として下記のことが上げられます。

  • 「病院広報の専門家が居ない、または専任の担当者不在」
  • 「病院広報戦略が無い」
  • 「病院広報のガイドライン、マニュアルが無い」
  • 「経営方針が分かり難い」
  • 「インタビューを医師や職員にし難い」

医療機関の広報業務は一般企業と異なり地域医療圏での医療提供になりますので、限定された地域でのサービス提供です。従ってメディア対応などよりは地域連携や住民とのコミュニケーションの優先されます。新たに広報担当になった時は、経営の方針と目的、医療機関の特徴、地域特性、DO&NOTDO(するべきこととしてはいけないこと)に加えて、次の項目の確認をお奨めします。

  1. 広報戦略策定と管理・評価および広報ガイドライン
  2. 印刷物、インターネットなどオウンド・メディアでの内容と頻度
  3. ホームページ上での情報収集と発信など管理方法
  4. 経営者、各診療科、各部門との連携と担当者との関係
  5. 院内広報及び採用広報
  6. メディア・リレーションの手順と戦略
  7. 危機管理システムと広報
  8. 病院広報の目的とゴール、または期待されていること

1.広報戦略策定と管理・評価および広報ガイドライン

ご担当者にとって経営戦略を理解している事が必要です。時として流れのままに通常業務を処理し、優先事項見失っていることが散見されます。経営戦略を広報・PRにおいてどのように展開していくことができるかはご担当者次第です。誰にも理解されやすいようにできるだけ数値化して表現することが報告業務や理解を促進します。

ご承知のように戦略がなければ、注力すべき業務について周囲の協力が得られないばかりか、ご自身の評価や予算も得られません。戦略があり、展開を管理し効果を評価できます。遠回しに感じるかもしれませんが、評価を得るには戦略、戦術そして目標が必要です。経営方針の方向を理解することで戦略がより明確になり、そして最適な手順やガイドラインも明確になります。

既に戦略や広報計画があれば、経営者・上司と内容を確認して役割と目標(どうなりたいか、業績評価指標(KPI))を明確にし業務を推進します。

現実には広報を従来の宣伝や口コミで集患しようという経営者の場合には、広報戦略も広報計画も無いことがよくあります。この場合は全体を把握してから広報の企画を作成し、提案してみたらいいと思います。参考:病院・医療広報の業務

病院情報の発信やPRにはガイドラインを設定し、経営者とのギャップを少なくしておくことは必須です。医療機関によっては経営者や上司の言動を忖度(そんたく)しなければならないことが往々にしてあります。そのためにも「するべきことと、してはいけないこと」を把握しておくことをお奨めします。(常識ですが忖度した結果、事実ではないことを発信することはすることは避けます、常にエビデンスが必要です)

2. 印刷物、インターネットなどオウンド・メディアでの内容と頻度

医療機関には基本的にパンフレットとホームページを運用しています。メディアとの接触に積極的な専門病院や特定機能病院もありますが、それ以外は地域住民へのリーチを優先する傾向にあります。また、採用広告、交通広告および看板は比較的多く利用しています。

3. ホームページ上での情報収集と発信など管理方法

情報発信の主なものはパンフレット、広報誌、ホームページ、イベントなどがありますが、近年は費用対効果からホームページが中心的なメディアになっています。ホームページ等では発信のみならず、患者・住民からの反応も同時に知ることができます。そのためにも今後はホームページのデータと患者数の分析などは経営上において重要な業務になっています。

病院ホームページの閲覧数等の数値の推移を知ることで、自院の認知度の変化などを把握することができます。広報またはホームページ専任者がいない医療機関ではアクセス解析をすることは業務が増加しますが、効果的なマーケティングや広報、採用で必ず役に立ちます。最近は無料のアクセス解析のサービスがありますので、ホームページの効果を数値化し報告書ができるようにします。

参照:ホームページで患者を獲得するには

近年ソーシャルメディアの利用が医療分野以外では進んでおり、すでに活用を進めている国立がんセンターなどもありますが、米国の病院はより患者に近い処で情報を発信して、成功しています。特に40歳代よりも若い患者を対象とする場合には、病院やクリニック(診療所)にとってホームページよりも効果的な接点を構築が可能です。

4. 経営者、各診療科、各部門との連携と担当者

戦略策定のみならず、経営者や各部門の業務を患者・住民に伝えて行くことで日頃から自院への関心を持ってもらうきっかけを作ることができます。そのためには院内各部署からの情報が出てくるような仕組みや人間関係は必須です。

病院広報担当者の大きな課題のひとつに、個人情報の障害もあって必要な情報が集まらないことがあります。

一般的に職員にとって情報発信をすることの必要性はよく理解されていませんので、経営側からの啓蒙が必要です。広報担当者レベルで情報発信の啓蒙と関係構築は重要な業務になります。少ない人数で広報部門が運営されていることが多くありますが、他部門を巻き込んで各部門の情報が入ってくる仕組みは広報担当者の努力または能力によるところが多くあり、重要なポイントです。広報の技術的な事だけでは他部門との連携が取れないことが、広報の難しいところでもあります。

経営者との連携は最も重要ですが、経営者からの必要な情報以外あまりコミュニケーションが無く十分ではないと感じている広報担当者もおります。理由は広報業務の実態が正確に理解されていないことがあります。従って「初めて病院広報業務を担当」した時には経営方針を理解するとともに定期的な状況分析に関する報告書を提出し、説明しておくことが重要です。提案をする場合も状況の理解がされていないと前に進みません。

5. 院内広報及び採用広報

広報の中で職員に対する情報発信は近年非常に有効です。経営方針や事業計画を知らせることで職員の円滑な協力を得ることを意図としています。通常は職員全体への情報発信はできても、個人個人を動かすような高まりにすることが安全性や満足度、業務成果に結び付けることになります。すなわち上意下達式のお知らせでは職員には理解されないものがあります。

6. メディア・リレーションの手順と戦略

年に少ない回数でもメディア(新聞、テレビ等)に情報発信をすることは有効です。一時的ではありますが周辺だけではなく広範囲に発信できますので広報・PRの効果は高まります。効果がありますが、反応も強く出ますので配信前に関係者間で対応方法について協議しておくことが必要です。特に事業規模が大きい病院は日ごろから情報を提供し、メディアとの共存を危機管理とともに準備することが必要となります。

7.危機管理システムと広報

医療機関における危機管理とは、医療事故をはじめとして大規模災害、新型コロナウイルス感染症パンデミック、ネガティブコメント、不祥事、個人情報漏えい関連、違法行為、経営等ありますが、ここでは災害・防災対策・パンディミックにおける対応について記述します。

災害・防災は既に院内に防災対策マニュアル等がありますので、マニュアルに沿って広報・PRに展開することができます。そのなかで広報が発信する内容のホームページ用テンプレートを事前に作成し、関係者と共有することが必要です。よくあるのは、(1)災害時、(2)休診、(3)面会制限、等です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は全国的な「緊急事態宣言」が発出されるほど危機的な事態であり、このような事態を経験している人はいません。差し迫った状態では経営者ときちんと情報共有することが難しいことが想定されます。このような危機(リスク)を想定されていない場合は危機管理やBCPとともに病院広報の基本的な枠組みを決めておくことがポイントです。もちろん時間があれば全体の見直しが必要です。枠組みが無いと経営者から「都度」指示されている場面に遭遇することがあります。

参考:新型コロナウィルス拡散時に病院広報ができること

その他の危機管理については、経営部門と対応について事前に調整しておくことが必要です。特定機能病院だけでなく中小病院でも経営上の追及を受けることがしばしば見受けられます。新型コロナウイルス感染症禍では危機管理やBCPがよく機能している医療機関は緊急事態宣言解除後のコミュニケーションが進んでいないように考えられます。

8.病院広報の目的とゴール、または期待されていること

病院広報は患者とのコミュニケーション(情報の発信と広聴)で、円滑な健康生活が送れるように支援することで住民に認知され、相互の信頼関係を構築することが目的です。

参考:病院広報の役割と目的

また経営者に対して医療界の変化の中で自院の経営に影響すること、そして患者がどのように考え、行動しているかについて定期的に情報を提供(報告)することが必要です。経営者はそれ以上の情報を持っているかもしれませんが、分析を加えることで気づきを与えることがあります。(マーケティング担当者の責任として情報提供をすべきですが、担当者によってはあまり積極的でないことが見受けられます。)

ひとり広報担当者の場合、パンフレットの制作やホームページの更新をしているだけの医療機関もあります。しかしホームページのアクセス解析は患者の受療動向を知るうえで重要な情報を知ることができます。さらに状況を数値で可視化できますので情報提供にはお奨めです。一人で広報業務が手一杯の時、割ける時間が少ないときには、簡素化して患者の受療動向を知ることは病院経営にも重要な情報を提供できます。

【はじめて広報担当者になった時の自己チェックポイント5つ】

      1. 医療機関を客観的に分析できる力(分析と可視化)
      2. 経営と医療情報に敏感であり、内外の情報を収集する力(企画・収集力)
      3. 経営者、医師、他部門とのコミュニケーション力
      4. 患者や住民の立場で情報を的確に伝える表現力(テキスト・動画)
      5. デジタル・メディアでの発信力・PR力

【補足】
病院の言葉を分かりやすくする提案ー国立国語研究所

更新:2020/06/08 (病院広報から転記)

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